市民参加型ワークショップ「自動運転のある暮らし:誰もおいていかない移動のデザインとその倫理」を開催しました

2018年12月9日(日)、京都府立京都学・歴彩館において、市民参加型ワークショップ「自動運転のある暮らし:誰もおいていかない移動のデザインとその倫理」を開催しました。今回のワークショップは、日本生命倫理学会第30回年次大会の開催期間中に、大会関連企画としてバイオエシックス・カフェという名称で実施されました。

この日の参加者は20人で、5つのグループに分かれて議論を進めました。今回のワークショップの流れは次の通りです。
 13:30- ワークショップ開始、みんなで考えてみる時間
 14:30- 休憩
 14:40- ゲストからのコメント
 15:00- もう一度みんなで考えてみる時間
 16:10- まとめ
 16:30  ワークショップ終了

全体進行は、山崎吾郎さん(大阪大学COデザインセンター 准教授)が、また、それぞれのグループでのファシリテータは、大阪大学や京都大学の学生8人がつとめました。

山崎さんからは、自動運転技術が、新しい移動手段の登場という話にとどまらない、複雑な社会技術の問題である、ということについて話がありました。社会インフラの刷新や倫理問題が伴う新規技術の導入を考える際には、実際に利用することになる市民の立場から議論を起こしていくことが不可欠です。今回のワークショップは、自動運転技術の未来の姿を思い描きながら、わたしたちがどんな社会の到来を望んでいるのかを考える機会にしたい、という開催の趣旨が伝えられました。

グループでの議論を始める前に、まずはお互いの自己紹介を。今回は自己紹介用のワークシートを使いました。会場に到着した人から、「自動運転技術ときいて パッと思いついた身近な人は誰?」と書かれたワークシートに記入していただきました。みなさんが記入していたのは、例えば、こんな言葉でした。
「80代の母親。自動運転技術を使うことができれば、安全に移動できると思う。」
「自分自身。現在教習所に通っているけれど、自動運転技術が発展すれば免許もいらない・・・?」

自己紹介が済んだところで、山崎さんから、絵本風の「対話ツール:どう変わる?自動運転社会」を用いて、簡単な説明がありました。対話ツールには、この日議論したい2つの問い(「Q1.自動運転技術を暮らしの中で、どのように活用したいですか?」「Q2.誰もおいていかない、移動のデザイン?」)と、それに関連するキーワードや基礎情報などが描かれています。全員で問いを共有したところで、1人1人がその問いに対する自分の考えをワークシートに記入して、その後、グループでの対話に移りました。

まずは、「自動運転技術を暮らしの中で、どのように活用したいですか?」という問いから考えました。「効率よく移動ができるのではないか」、「移動の時間は別のことに時間を使えるようになるのでは」、「今まで運転できなかった人も車が使えるようになるかもしれない」といった声が聞こえてきました。

前半のグループ対話のあとは、休憩を挟んで、2人のゲストによるコメントがありました。辰井聡子さん(立教大学法務研究科/法学研究科 教授)からは、先進的な技術の問題を考えるときには、専門的な知見(技術的な知識や規制面での知識)からの議論が先行しがちではあるものの、生活実感に基づいた市民1人1人の倫理感も大事にしてほしいという趣旨の指摘をいただきました。また、今回のワークショップ企画者の1人である岸本充生さん(大阪大学データビリティフロンティア機構 教授)からは、今では当たり前に使っている技術もそれぞれの導入の時期にはどれも「新規技術」だったはずで、過去の「新規技術」の導入の歴史的な経緯に学ぶこともできるのではいかという示唆をいただきました。また、新規技術の導入にともなう光と影の側面を、広い視野で考える必要があるというコメントがありました。
 

このコメントを踏まえつつ、対話の後半では、今回のワークショップのタイトルでも表現されていた、誰もおいていかない移動のデザインを実現するためには、どのようなことに気をつけながら、自動運転技術の開発や社会への実証を考えていけばよいのか、という問いをグループ内で語り合いました。

最後に5人のグループファシリテータから、グループでの議論の内容が会場全体に共有され、再びゲストからのコメントをもらって、このワークショップは終了しました。

参加者のみなさんからは、
「自動運転技術という新しい技術を切り口として、未来の社会、未来のくらしを具体的にイメージすることは、とても楽しい時間でした。」
「問いが難しくてあまり思い付かなかったけれど、グループで話しているうちに色々と掘り下げて話ができてよかった。」
「年代など、属性の幅がある参加者とともに考える機会がとてもおもしろかったです。」
といったご感想をいただきました。

ご参加ありがとうございました。

http://stips.jp/181209/より転載)

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