2019年6月26日(水)、千里公民館において、サイエンスカフェ「自動運転とわたしたちの暮らし」を開催しました。ゲストは、交通心理学がご専門の篠原一光さん(大阪大学大学院人間科学研究科 教授)で、この日の参加者は20人(大阪大学や豊中市の関係者を除く)でした。
今回は、昨年までのサイエンスカフェとはまた違うスタイルで開催してみました。今年度の特徴は次のようなものです。
・参加者のみなさんには、少人数のグループに分かれて座っていただく。
・「対話ツール:どう変わる?自動運転社会」を使って、この日のテーマを簡単に紹介。
・グループごとにテーマについて対話し、その内容を会場全体で共有した後に、ゲストからコメントをいただいたり質問に答えていただいたりする。
・各グループには大阪大学の学生が1人ずつ加わって、対話のお手伝いする。お手伝いをしたのは、授業「科学技術コミュニケーション入門A」でファシリテーションスキルについて学んだ受講生たち。
「自動運転技術と聞いて、パッと思いついた身近な人は誰?」「自動運転技術を暮らしの中で、どのように活用したいですか?」といった問いかけが書かれたワークシートを活用しつつ、自動運転への期待や不安などをグループごとに議論しました。ご自身や身近な家族などの生活をサポートしてくれるのでは?という声があがったり、免許制度や保険制度など既存の枠組みにどういう影響があるのかが気になったり。
途中で、他のグループでどのような意見やアイディアが出ていたのかを会場全体で共有しました。出てきた意見を眺めながら、ゲストの篠原さんからコメントをいただきました。
たとえば「自動運転で本当に事故は減るのだろうか?安全になるのだろうか?」という疑問に対しては、「完全に自動運転だけの車両が導入された社会になれば事故はトータルで確実に減るはずと考えられています。ただし、仮にそんな未来が訪れたとしても、事故の責任を誰がもつのか、という新たな課題に向き合わなければなりません」というお返事がありました。
また、「自ら運転することに楽しみを見出す人もいるのでは?」という意見については、「たしかにその通りで、自動運転は人間から運転という行為を取り上げることなんですよ」というコメントもあり、その言葉にはっとした方もいらしたようです。
後半は篠原さんからのコメントや他グループの意見もふまえて、グループ内での対話もより活発になり、最後の質疑応答コーナーではゲストへの質問が次々と寄せられました。篠原さんからは「たとえば将来的に、現在の家電製品のような位置付けにまで自動運転が社会に浸透したら、社会の中での車の位置付けや、車の概念そのものが変わっていくかもしれないですね」といったお話もありました。
サイエンスカフェ終了後に参加者から寄せられた感想としては、「自動運転になった場合の免許の返納について印象に残った」、「限界集落がなくなる可能性がある」、「開発途中の技術で、不安を持っている人が多いと分かった」などがあり、ひとつのテーマでもさまざまな角度から考える必要がありそうだ、ということが共有されたのではないでしょうか。他の人の意見にまずは耳を傾ける、そして、意見の違いを楽しむことのできる場づくりの価値について感想を述べてくださった方もいらっしゃいました。
対話のお手伝いをした学生たちにとっても、多様なバックグラウンドをもつ方々のお話を聞くことができたことが良い刺激になったようでした。